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    Roland VM-C7200の修理

    • 2015.07.01 Wednesday
    • 21:22
    お世話になっているPA業の社長様からRoland製のセパレート型ミキサーのコンソール部であるVM-C7200の修理が可能か相談を受け、預かって調べることになりました。
     
    ミキサーとは音楽等のイベントや音楽スタジオ等で複数のマイクや音楽プレーヤーの信号を入力し、個々の音量バランスや音質を調整して合成し、スピーカーを鳴らすアンプや録音機器等に送り出す物です。



    写真のような形ですが、このVM-C7200はミキシングシステムとしてのコンソールではあるけれど、フェーダーやトリム等の操作とその操作量をデジタル化するエンコーダ機能が主で、実際にマイク等の音声信号を接続して処理するプロセッサー部は別に有り、それとは専用の通信ケーブルで繋がるセパレート型です。

    よく見るアナログミキサーや一体型デジタルミキサーと異なり音声等のアナログ信号はこのコンソール部分には来ておらず、別箱のDSP内蔵のプロセッサー部に対して音量音質の調整データをデジタル信号化して送り出す命令機能とそれの記憶機能です。

    このセパレート型は音楽イベント等で客席側にミキサーを置いた時、そこに入力するまでステージ上マイク等の音の入り口から長々とアナログ信号を引き回す事を抑制できる分、音質が良いという発想で開発されたタイプと聞きました。確かに音もそうだろうしバランス伝送とは言えマルチケーブル使うPAシステムではケーブルの保護や日常の管理も含めてしんどいですもんね(バイト程度の経験だけどこれは判る)。

    故障モードの一つでフリーズする様子はご依頼主のスタジオで見せてもらったので、その帰り車中では”コンソールの中は全部デジタル信号だろうしなぁ...探れるかなぁ....”と思案しながらのスタートです。


    とにかく中を開けないと始まらないので側板と手元のレスト部を外し、裏返してもフェーダーが机上に当たらないよう仮設足台をボディ端に貼り付けてからひっくり返します。

    そして裏板を外したのがこの写真。この辺りから先はRoland関係者さんが見たら怒るでしょうけど、依頼主さんも私も自己責任だから勘弁してね。



    右上が電源部、左上がCPU基板、CPU基板の下にはディスプレイ部分と卓側からのマイク入力とヘッドフォン出力の小さなアナログIO部分が隠れてます。

    中段と左の縦基板がchセレクト等のSWを並べたSW基板、中央部にはSW基板の上に被さるよう支持された電源分配基板があり、手前側半分は2階建て構造でフェーダー基板とフェータープロセッサ基板の構成です。


    分解して基板単位で載っているIC型番をメモしながら、



    それらの部品機能から基板内でやっている事を予想しつつ


    回路図を書きはじめてみます。


    ボタン操作に反応しない事が多そうなので、そのボタンSW(タクトSW)そのものの状態チェックをスタート地点にし、その信号の前後を追いかけて配線図にしていきます。



    基板を外す前に波形チェックで問題は無かったのですが念のため電源も



    CPU基板も





    CPU基板の50pinコネクタはおそらくサービス部門で使う解析機器接続用のI/O端子なんでしょう。PCのSCSI-IFで使われていたコネクタと同じようです(懐かしい)。

    この端子部分にはSW系とCPUを繋ぐデータBUSも繋がっています。ピッチが合うコネクタ付きフラットケーブルを少し加工して観測したい信号pinに合わせて挿しておき、そのケーブル反対側ではリード線を挿してTPにします。


    更に周辺ロジックのデータやセレクト等の端子でオシロ観測やトリガーに使えそうな信号端子に観測用リード線をハンダつけしてます。右上の袋は基板のバックアップ電池が入っています。

    そして動かしながら観測しては回路図書き取り範囲を広げてまた観測....を繰返し.....
    不具合の状況を撮っているのでビデオでどうぞ。



    ご覧のとおりで動きがとても不安定と言うか、NG現象が複数あると言うか。

    SW系ボード上でセレクトされたチップからはきちんとそのタイミングに合った信号は出ているけれど、それを観測出来た頃にはほとんどフリーズしている状況。だからSWボード系の問題ではないというのは直ぐ判明したのですが。

    実際はここからかなりの時間を観測してまして。
    しかしBUSを観測しているとトリガーが掛らないどこか(注目以外のブロックの意)からBUSに信号が現れた時に誤動作しているのが判りました。

    下の写真はSWボード上の出力に該当するある観測点に注目し、そのチップがセレクトされるタイミングをトリガーに設定し、Data端子を観測している時のもので、写真内の下が注目している端子が接続されているD-BUSの信号波形です。
    観測点は操作するSWの出力に該当する端子なので正常時無操作の時は信号もほとんど無く静か(変な表現だけど)で、操作に応じて出力のHiLo変化も観測できるのですが、一旦勝手に動く異常が始まると全くオシロが同期しない無関係のタイミングでランダムな信号が断続的に発生します。操作系からの出力ではない別ルートから生じている事になる訳で....。


    トラブルシュートの感触としてはBUS上で何かが勝手に信号を出している。いわゆるスリーステート状態等も無視して動いてしまうチップがあるのか?そんな故障が起きているのか?BUSにぶら下がっているチップのどれが出しているのか知る方法は無いか?という疑問が脳内をぐるぐるぐるぐる。

    やっぱりデジタル信号は苦手です。

    でもじっくり書き取った回路図と、このシステムの機能、そして故障現象を総合的になが〜く考えていたらようやく私の第六感が働き出して閃きました(閃きが遅い....)。

    それはこいつ


    SWボード出力が繋がっているSH-2マイコンのBUSに、DSPプロセッサBOX行きのRS422トランスミッターチップ類等と共に共通接続されているメモリー。

    こいつは何のため?プロセッサやコンソールカスケードとの通信でBUS速度差の調停?操作内容を記憶する?辺りの推測と、異常動作の起き方やその症状との関連可能性を想像していると、いちばん怪しいやつだと結論付けました(紆余曲折を省略しているので優秀なトラブルシュートに見えますねぇハハハ)。

    交換品の注文先は海外通販で見つけましたが、さすがに旧規格品なので流通在庫だけなのでしょう。10年前の2005年製の新品が届きました。
    故障チップを外して交換後の動作確認の様子はこちら。



    やったね!あれほど異常だった動作は回復してレスポンス良好になりました。

    いや〜良かった!
    今回は故障が直って喜ばれて良かったのと、デジタル回路は苦手だから直せて良かったの両方で久しぶりに満足度高かったです。
    しかし、Rolandのサービスさんやこれの設計さんが見たら笑っちゃうんだろうな〜でも面白かったですハハハ。

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    • 2017.01.14 Saturday
    • 21:22
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      コメント
      とても興味深く拝見させていただきました。技術的な事はサッパリわかりません(一応電気科高校卒なのですが(^^;)が音響機器は好きなのでワクワクしました。陰ながら引き続き応援します。
      • たくちゃん
      • 2015/11/23 11:25 AM
      コメントありがとうございます。
      掲載更新が遅くのんびり進行していますが、何らかのご参考や暇つぶしになれば幸いです。
      • カネイチ
      • 2015/11/25 10:26 AM
      うわ〜凄いですね〜VMCの回路図
      まだ残っているようでしたらコピー頂けませんか?

      現役ではないですが、一応デジタル回路の設計もしていました
      壊れた時の修理に使えればと思います

      よろしくお願いします!
      • 「ろくたん」
      • 2017/07/27 5:08 PM
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